読み仮名 もくぞうじゅういちめんかんのんぼさつざぞうみしょうたい
指定種別 県指定
種別 工芸品
指定年月日 2016年 4月 8日
指定詳細
数量 1面
所在地 陸前高田市広田町
所有者 個人蔵
保持団体
管理団体
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概要

本文化財は、鏡板1面、鏡板方座1基、鐶座2口、菩薩形坐像1躯、花瓶2口からなり、鏡板には両腕とも屈臂し、腹前で全指を捻る2目2臂の姿で、化仏1軀及び 頭上面7面を戴き、蓮華座及び岩座からなる台座に坐している菩薩形坐像1躯をあらわす御正躰である。鏡背銘文の種字(仏像をあらわす梵字)により、十一面観音と認められる。
 鏡板の径は49.9cm(1尺6寸5分)で、菩薩形坐像の像高は現状で20.4cmであり、鏡板径が1尺6寸を超える大型の御正躰は岩手県内においては破格の大きさである。さらに十一面観音菩薩坐像やその台座は立体感を明瞭に表現し、また外区の文様や獅噛形の鐶座等、意匠性への関心の高さも注目される。その堂々たる存在感と、入念かつ暢達な制作技術が観察される本作例は中世の岩手県域を代表する御正躰である。
 鏡背の銘文から明応5年の制作年のほか制作目的、願主等が記されており、黒崎神社に奉納する目的で制作されたものと判明し、中世史の貴重な情報を伝えている。
 本御正躰は、意匠性への関心の高さや方座を伴う点等が極めて個性的で、同じく陸前高田市常膳寺の木造十一面観音菩薩立像と同様、気仙地方の地域的特色を反映している可能性があり、これらの特色は個性が特段に発露した近世の御正躰群が岩手県域に出現する環境がすでに醸成されていたことを示すとともに、近世の岩手の歴史文化を多様かつ豊穣なものとしたそれらの御正躰群の先駆けとして、美術史のみならず地域史及び文化史の観点からも高く評価されるべきものである。