読み仮名 しずくいしちいきののらぎ
指定種別 県指定
種別 有形民俗文化財
指定年月日 2006年 9月 26日
指定詳細
数量 一式
所在地 岩手県立博物館
所有者 岩手県
保持団体
管理団体
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概要

岩手県雫石町と盛岡市玉山区には雫石あねこ風俗、玉山のスッパ風俗と呼ばれる地方独自の野良着が伝承されている。いずれも上下二部式で、上衣は藍染めの麻と紺絣の接ぎ合わせで、麻の部分には雫石模様、玉山模様という夫々の村で決められた模様で染められている。補助衣となる付属品(女性)には色彩豊富に刺繍が施され、着装した姿は女性らしさを強調し、おしゃれ着といってもいいような華やかさもある。他地域には見られない、両地域の野良着は、岩手県の在来型野良着の双璧ともされている。
 機能的、美的に創意工夫された野良着は、自給自足の衣生活の中で、親から子、子から孫へと伝えられ、昭和初期まで各戸で制作、着用されていた。この形式はいつ頃考案し、着装され出したものか定かではないが、古老の話をたどると、明治初期には着用されていたことは確かである。
 昭和初期、彫刻家、画家、民俗学者であった盛岡市在住の吉川保正(1893-1984)に招かれた柳宗悦(1889-1961)は昭和17年「工芸」でこの風俗は京都の大原女や白川女の風俗にも増して艶やかであると称賛し、また画家林唯一(1895-1972)は昭和35年画集「郷土の風俗」(全国の働き着の画集)で全国に紹介している。両氏は著書を通して農村の生活形態が変化しつつある現在、この雫石地方の野良着風俗も早晩失われるであろうから、伝統を後世に残すべく手を打つことが急務であるとも述べている。
 雫石地域の野良着の収集品としては、その内容において、他に類をみないものであり、中央の衣生活文化とは異なって発達した、岩手県内における農村の衣生活文化を探る貴重な資料といえる。