読み仮名 はやちねたけりゅううきたかぐら
指定種別 県指定
種別 無形民俗文化財
指定年月日 2018年 4月13日
指定詳細
数量
所在地 花巻市東和町上浮田
所有者
保持団体 早池峰岳流浮田神楽保存会
管理団体
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概要

 早池峰岳流浮田神楽は東和町浮田集落に伝承される神楽で、成立は1916(大正5)年2月とされる。早池峰岳神楽(以下、岳神楽とする。1976(昭和51)年国指定無形民俗文化財・2011(平成23)年ユネスコ無形文化遺産登録)の直系の最後の弟子神楽である。来歴については、浮田集落の佐々木忠孝氏と阿部藤蔵氏の二人が鎮守「幸神社」の奉納神楽の確立のため岳神楽に弟子入りし、伊藤巳太郎氏を師匠として農家の長男7名で神楽を始めた。歴代神楽衆の氏名は幸神社境内に建立された「神楽の碑」に刻まれている。岳神楽より授与された大正5年銘の「奥付書」が保存されている。岳神楽直伝の「奥付書」は現存するものが僅かであり、早池峰神楽の伝播を知るうえで貴重な資料となる。浮田神楽が神楽を開始後102年の年月が経過しているが、これまで中断したことはなく現在に至るまで師弟関係も継続している。着目すべきはこの師弟関係である。岳神楽と浮田神楽の師弟構造は、神楽を「教える」側と「教わる」側の両方に「弟子神楽が(岳神楽の)経済活動を支える」「弟子の神楽が守られる」「お互いの人出不足を回避できる」などの相互関係を伴っており、両方の神楽を安定化させるものである。現代も浮田神楽は岳神楽から舞の指導を受けて、時には師匠の代役を務め、諸々の手伝いなど相互協力のもと「早池峰岳流」と名乗ることが単なる名称のみの継承ではないことがわかる。

 昭和59(1984)年、浮田神楽は南部家家紋「向かい鶴」(岳神楽の神楽幕の象徴でもある)の使用許可を盛岡藩主南部家より得ており、このときは当時の岳神楽代表である小国誠吉氏が南部家に出向いている。以後、師匠同様に「向かい鶴」と「早池峰岳流浮田神楽」の染め抜きの入った神楽幕を使用している。浮田神楽は昭和58(1983)年に保存会を発足。現在は佐々木孝男会長(佐々木忠孝氏の孫)を中心に13名の神楽衆で、年間30回以上の神楽の上演など活発に活動している。毎年元旦には、浮田の5つの地域の各公民館で「下舞」と「権現舞」の祈祷舞を行う。また、幸神社の他9箇所の神社例大祭でも神楽の奉納を行い、地域の神楽としても重要な役割を担っている。加えて、毎年神楽教室を開催して子供たちへの伝承活動に努めている。

 このように、神楽成立の背景に歴史的裏付けをもち、地域貢献という点でも重要な役割を果たしている。また、継続性・将来性についても多くの芸能が途絶えてゆく現状にあって、「早池峰岳流神楽」というひとつの共同体として存続していて、今後の民俗芸能の維持保存について考える上で参考となる事例である。

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