読み仮名 もくぞうかんのんぼさつりゅうぞう(でんじゅういちめんかんのん)
指定種別 県指定文化財
種別 有形文化財(彫刻)
指定年月日 2019年 4月 16日
指定詳細
数量 1軀
所在地 遠野市松崎町
所有者 宗教法人 西教寺
保持団体
管理団体
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概要

 本文化財は、遠野七観音巡礼第二番札所松崎観音堂の本尊像であり、現在、同内陣厨子内に安置されている木造十一面観音菩薩立像である。

 一重蓮華座上に立ち、総高215.9cmを測り、現状で2面2目2臂の菩薩立像である。その姿は両腋を閉じて上腕を左右とも体側に密着させており、左手は臂を曲げて掌を前方に出して全指をにぎって未敷蓮華を執っている。右手は臂をわずかに屈して右大腿部前面で掌を前に向けて全指を伸ばしている。像の背面には墨書銘を有しており、その内容から慶長11年の制作とわかる。

 構造は頭体幹部一材製で、髻頂から足枘、両前腕の大半、両袖先と裾先を含めて像の大略がカツラ材とみられる竪木一材製である。別製の頭上面、白毫相、左右の前腕袖先端、両手首先、両足先などは接合されており、これらもカツラ材とみられる材である。背板材のほぼ全面にわたって墨書銘を有しており、その文意から供養年月日、関与した人名などの情報が読み取れる。これらは同時期の文献資料が潤沢とはいえない当地の営みの一端を今に伝える存在としても評価されるべきものである。

 本像は、細身で腰高かつ抑揚に乏しい体躯、動きのない直立姿勢などの作風や素地に直接彩色を施す点、上眼瞼と下眼瞼に段差をつけて表す眼の造形のなどに中世以前の影響が顕著にみられるが、一方で本像は頭体幹部材に木心を外した規格材を用いていることや、銘文を背面に記入していることなど、平安諸像とは異質な特徴も指摘される。さらに、下膨れの頭部は面長で独特な形状を示し、着衣が如来像のものである点などは、本像に独自の表現といえる。

 このように本像は、現岩手県域に所在する平安諸像の作風と構造とを学習し、それらを規範として制作された像と評価され、平安時代の規範意識が当代まで存在していたことを示す像として、さらにその規範の掉尾を飾る像として、岩手県の歴史を知る上で重要な位置を占めている。また、本像のように、旧来の規範を窺えるように遵守することで、平安時代以来の伝統が息づいていることを示すとともに、本像に続く近世の多様かつ豊穣な歴史文化の先駆けとして評価すべき重要な存在である。

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