弘法さまと鮭を聞く

あらすじ

 むかし、津軽石の名がまだないころ、冬のある寒い晩、村に一人の旅の僧がやってきました。みすぼらしい姿の僧を泊める村人は誰もいません。かわいそうに思ったある村人が僧を泊め、心ばかりのごちそうをしました。翌日の朝、「これはこの村にいつか役立つから」と僧は「石」をお礼に置いていきました。僧を泊めた村人は「こんな石はそこらじゅうにいくらでもあるのに…」と思って、石を前の川に投げ入れました。

 やがて秋になると、前の川に鮭が毎日上ってくるようになりました。これはただ事ではないと思った村の長老は、神道さまに拝んでもらうことにしました。すると「私は弘法大師です。この間お世話になったお礼に置いていった石を慕って、鮭が川を上って来るようになったのです。あの石は以前、鮭がたくさん獲れる津軽の村から拾ってきた石です」と言いました。

 それから鮭は毎年川を上りようになり、村は豊かなになりました。やがて、その村は「津軽石村」と呼ばれるようになりました。