読み仮名 うのとりかぐら
指定種別 国指定
種別 無形民俗文化財
指定年月日 2015年 3月 2日
指定詳細
数量
所在地 下閉伊郡普代村 鵜鳥神社内
所有者
保持団体 鵜鳥神楽保存会
管理団体
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概要

鵜鳥神楽は東北地方に多数分布する獅子神楽に分類することができる。獅子神楽とは、神を象徴する獅子頭によって悪魔払いや火伏せなどを祈祷するものであり、鵜鳥神楽において演じられる権現舞もその好例であると考えられる。また、鵜鳥神楽は修験道の行者、つまり山伏によって演じられていた、いわゆる山伏神楽の典型を示している。
 鵜鳥神楽は北廻り(久慈市まで)、南廻り(釜石市まで)と称して、宮古市の黒森神楽と一年交替で、三陸沿岸の村々を約2ヶ月間かけて巡行している。北廻りは「普代・野田・久慈地区」計8か所を巡行し、一方、南廻りは「普代・岩泉・宮古・山田・大槌・釜石地区」計14か所を巡行している。
 1月8日の舞い立ちから始まり4月の舞い納めを行うまでの間、各地区を巡行する。昼は権現様を携えて家々を廻り、権現舞によって家内安全などを祈祷し、夜は民家や公民館を神楽宿として舞い込み、権現舞やしっとぎ獅子を演じる。権現様を祀って宿の一間に神楽幕を張り、各種の演目を村人に披露する。
 鵜鳥神楽は全部で53演目が伝えられており、役舞と役舞以外に大別される。役舞は、必ず演じられるものであり、清祓・岩長姫・岩戸舞・斐の川・御祈祷・御神楽・榊葉・松迎・山の神・恵比寿舞などが挙げられる。
 保存会の状況は、大人14名で構成している。普代村の鵜鳥神楽の神楽衆は和野(田野畑村)の人々が大半であり、数人を除いて大宮神楽(和野神楽)の神楽衆でもある。
 鵜鳥神楽と大宮神楽の関係を整理すると、大宮神楽として活動する場合は大宮神社の権現様を奉じて、霞である田野畑村内の集落で神楽を演じる。一方、鵜鳥神楽として活動する場合は、鵜鳥神社の権現様を奉じて、霞である久慈市~釜石市の範囲を隔年で訪れている。両者は奉じる権現様や霞が異なっており、まったく異なった団体として理解することができる。
 鵜鳥神楽と黒森神楽が文化庁によって「記録作成等の措置を講ずべき無形民俗文化財」として選択され、「陸中沿岸地方の廻り神楽」という名称をに明示されているとおり、鵜鳥神楽が三陸沿岸の広域を巡行する廻り神楽の形態を今日でも維持していることは、全国的に見てもきわめて稀有な事例である。
しかしながら、長期にわたって広域を巡行する鵜鳥神楽は、今日さまざまな困難に直面している。人々の生活や意識が変化したため、どの村でも神楽宿を引き受ける家が急激に減ってきており、公民館で代替する場合が増えてきた。廻り神楽は、もはや失われつつある貴重な伝承として扱うべきものである。

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