タツブの息子

あらすじ

 むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

 子どもがいない二人は、神さまに「子どもをさずけてください」と願をかけていました。すると、おばあさんのひざが腫れてきました。やがて、膝が割れて大きなタツブ(タニシ)が生まれました。かわいいタツブを、おじいさんとおばあさんはたいそうかわいがりました。

 しばらくたったある日、タツブが「馬に鞍を付けてください」と言うので、言うとおりにしてやりました。するとタツブは、馬をつれて山にたきぎ採りに行くようになりました。おじいさんとおばあさんは、働き者のタツブをたいそう大事にしました。

 ある日のこと、山から帰ってきたタツブは「お嫁さんがほしい」と言い出しました。おじいさんは次の日、三人の娘がいる町一番の大きな商家に行きましたが、「タツブの嫁に来てください」となかなか言い出せずにいました。すると商家の主人が「何がほしいのですが?」と尋ねるので、「実はおたくの娘さんで、誰かタツブのお嫁さんになってくれる方はいないか、とお願いに来ました」と言いました。主人が一番目の娘に尋ねました。すると一番目の娘は「人ならともかく、タツブの嫁なんてとんでもない」と言いました。二番目の娘も答えは同じです。三番目の娘は「お嫁に行きます」と言いました。主人もたいそう喜びました。

 タツブと娘は、たいそう仲の良い夫婦になりました。次の年の節句の日、お土産を持って二人でお嫁さんの実家に里帰りをしました。翌日、二人で山にいると、空からタカが飛んできて、タツブを加えて飛び去りました。タカがタツブの殻をつついてむくと、中から六尺もある大きくて立派な男と、ピカピカに光る打ち出の小槌が出てきました。喜んだ二人は小槌を振って行列をつくり、お嫁さんの実家に帰りました。それを見た一番目と二番目の娘は「私がお嫁に行けばよかった」と、たいそう悔しがりました。