魚の女房を聞く

あらすじ

 ある浜に正直者の漁師がいました。心優しい漁師は、捕りすぎた魚は海に逃がしていました。

 ある日、漁師のところに若く美しい娘がやって来て「私を嫁にしてください」と言いました。漁師は「私は貧乏だから、あなたのような人を嫁にもらうわけにはいきません」と繰り返し言いますが、娘は聞き入れません。根負けした漁師は、娘を女房にしました。

 女房は働き者で、貧乏なことなど気にも留めず、朝から晩までよく働きます。

 また、女房のつくる味噌汁は美味しくて、どうやってつくっているのか漁師が尋ねますが、女房は笑うばかりで答えません。

 味噌汁の作り方をどうしても知りたい漁師は、ある日、台所の天井に登ってのぞいてみます。何と、女房のつら(顔)は人、かばね(体)は魚でした。そのことを女房に話すと、女房は顔色を変えて「実は私は人ではありません。あなたに助けられた魚なのです。あなたの優しい気持ちに惹かれて今までいましたが、知られたからには海に戻るしかありません」と言いました。

 次の朝、浜に行った女房は岩の上に立ってずっと海を見つめています。漁師がそばに行くと「あなたに差し上げます」と手箱を渡します。すると急にあたりが暗くなって、雨が降りだしました。女房はふり返って「あなたと一生いたかった」と言うと海に帰っていきました。漁師が手箱を開くと、宝物がいっぱい詰まっていました。