蛸の浦を聞く

あらすじ

 むかし、赤崎の浜にはタコがたくさんいました。その中にタコの主がいて、海が荒れるのはタコの主が暴れるからだと人々に言われていました。

 その浜には、貧しい漁師の家族がいて、夫婦と息子の三人で暮らしていました。ある日、いつものように父は漁に出かけました。ところがその日に限ってさっぱり魚が捕れません。家に帰ろうとすると、急に糸を引かれます。手繰り寄せようとしましたが、逆に海に引きずり込まれ、二日後、父は浜に打ち上げられました。恐ろしいタコの主の仕業でした。

 息子はかたきをとろうと、それから毎日、海に出かけるようになりました。ところが十日たっても二十日たっても、タコの主は現れません。父が亡くなって四十九日がたちました。周りの人は「四十九日には海に出ないものだ」と止めましたが、息子は聞かずに海に出かけました。その日の夕方、ついにタコの主が現れました。両足を舟のへりにつけて息子に襲いかかります。息子は小刀でタコの主に切りつけ、ついにタコの主を退治しました。

それからというもの、この海は凪の穏やかな海になり、人々はこの浜を「蛸ノ浦」と呼ぶようになりました。